
日本に帰国後、「半農半医」としてご活躍。農業と医療、一見異なる世界ですが、農業から教わること、感覚的に掴めることも多いですねと三林寛先生。自然栽培、食を通してこれからの生き方、その先にあるものをお話下さいました。
もう、すべて繋がっているんで。本当にとことん突き詰めると、多分とても難しいのですが。。。人間の心の問題なんじゃないかなと思います。
Q)どういったきっかけで、シンガポールに行かれたのですか?
金沢大学病院にいて9年間。その医局を出ようと考えた時に、シンガポールで募集があると知って。応募したら受かって。
でも、そこで気づいたんです。あっ、英語は苦手だったって(笑)
Q)(笑)それでも、海外に行きたいという思いはあったのですか?
大学病院でとても忙しくて、ストレスが溜って疲れてくると、夜に南の島の写真とか見て、”いいな〜”って思っていました。
たぶん、それで職を探している時に、南の国シンガポールの応募が目に留ったんだと思います。
Q)シンガポールで働いてみて、如何でしたか?
まず、病院がプライベート病院だったので、特に「株式会社」だって感じました。
日本だと患者様の治療が第一優先ですけれど、シンガポールでは経営が第一なのでそれはショッキングでした。
Q)会社を経営しているかのように、病院もあるというスタンスなんですね。
その割り切りは凄いなと思いますね。
Q)他にシンガポールでの経験で得たことはなんですか?
発想がもの凄く自由で、大きくなった様な気がします。
日本に居れば出来なかった様な発想が出来るようになった。シンガポールは色々な人種の方がいるので、つられて自分もオープンになったような気がします。
Q)例えば、どんなところがオープンになったと思われますか?
日本にあのまま居たら、現在の「半農半医」にはなっていなかったと思います。(笑)
Q)なるほど!では逆に言うと、今の生き方っていうのは、シンガポールに行ったことで?
そうですね、そこで大きく舵が切られた感じですね。
日本にずっと居たらきっと「自然栽培」に出会わなかったと思います。深く関わっていないと思います。
Q)シンガポールで何があったのでしょうか?(笑)
春美さん(インタビューア)に、出会ってしまったんです。(笑)
Q)アハハ!そうですね。少しだけ簡単にお話すると、2010年、ドキュメント映画の上映会をするにあたり、シンガポールで「自然栽培」に興味ある人がいるかしらと検索したら、先生のブログにたどり着いたんですよね。(笑)私はオーガニックを学んで、自然栽培に行きました。それでご連絡したのが最初でしたね。ですが、その頃から先生は「自然栽培」に、ご興味があったということですね。
食事にキーポイントがあるじゃないかと考えていて、色々と調べているうちに「自然栽培」というのが良んじゃないかと。丁度その頃に、木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」の本を読んでいて。
あの本はとっても感動して、何度バスの中で泣きそうになったか、堪えるのに必死な位でした。(笑)そういったことかがきっかけで、自然栽培に興味を持ち始めて。そしたら突然、春美さんからメールを頂いたんです(笑)
Q)「自然栽培」のお話出来そうな方がいると、思わずメールしました。でも、私と出会う前から、食・健康に関するブログは配信されていましたよね。
最初は、ホーカーズ(屋台の飲食店)の食事の写真をアップしていて、とてもジャンキーなブログでした。(笑)ただ、シンガポールに行って時間が出来たので、色々と勉強して行くうちに、これはいかんと思って方向を変えました(笑)
Q)シンガポールでも食を通じて健康を考える活動をされていたと思うのですが、それを決めた動機はどんなことだったのでしょうか?
やるぞ、ここで始めるぞという気持ちはなくて、段々、自然と流れがそちらに行きました。
勉強して、自分の中でそれが貯まって来たら、神様の思し召しかのように自然と春美さんが現れて、アハハ。一緒にセミナーしましょうって(笑)
Q)アハハ!実際にやってみて如何でしたでしょうか?
伝えるのは、難しいですね。
でも、伝えて行くというのは、大事だなと思います。なので、とても良い経験でした。
Q)食だけの問題ではないと先生は気づき始めて、さらに突き詰めて行くと、食材を育てるところに行ったという感じでしょうか?
もう、すべて繋がっているんで。
本当にとことん突き詰めると、多分、とても難しいのですが……。人間の心の問題なんじゃないかなと思います。
いま、アビダンマという仏教の経典を読んでいるのですが、食事がおかしくなった原因になる心の問題を、2500年も前に全て分析されてて、ブッダってすごいと思いました。
食事がおかしくなった原因を色々と突き詰めると、人間が善くない心を持って行動すると、それが反映されてそれで悪くなっていっていると。
Q)色々な世の中の流れをみてもそうですよね。食だけではないですよね。
全部、そうなんだと思いますね。
Q)自分の心をテーブルの上にのせて眺められるような、どこか客観的になれれば、もっとみな生き易くなるんじゃないかなと思いますね。
そうですね。客観的に見られて、具体的にどうすればいいと自分で分れば、もっとうまく生きられて、食事もよくなって、みな元気になるんじゃないでしょうか?
Q)今まで患者さんを多く診て来て、いま先生が食事や農業に興味を持ってから、患者さんを診る。恐らくそれは変わったんじゃないでしょうか?
身体に関する認識が変わりました。
西洋医学というのは、西洋の科学をベースにしているので、デカルト的二元論、観察する側とされる側。分離して関連ないものとして観察する。
なんとく人間の身体も機械のような物質的にみてしまうのですけど。身体を作っている物質は、どんどん入れ替わっている。食べ物を学び始めた頃は、仏教の考えなど学んでなかったのですが、今思うと同じ。身体も「無常」なんです。
そうすると身体を物質として捉えるのではなくて、身体も「流れ」として観る様になる。
「シンガポール食育セミナー」でも、それをロウソクや川の流れで例えてお話しましたが、実際にロウソクの炎も、炎という物質があるのではなくて、ろうが溶けて上がって来て、空気中の酸素に反応して燃えて、二酸化炭素と水、水蒸気は出ていくけど、炎の形はずっと同じように保たれている。
でも、これは炎という物質があるわけではなくて、ずっとその現象がずっと続いている。
その為には、ちゃんとろうが溶けて、上がって来て、その循環がないと出来ない。これが身体とごく似ているんじゃないかなと思います。このように身体に対するイメージが変わりました。
Q)そうすると患者さんの健康の状態に対しての判断も、変わりますよね。
変わりますね。
見方が変わるので。ただ、まだ患者さんの全てを把握はできる程ではないので、今はどうやったら上手く行くかを、勉強中。そのために、アーユルヴェーダ(インド古代医学)を勉強しています。方向性はなんとなく観えてきたので、どれだけ深く学べるかそこが勝負だと思っています。
to be continued
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